第10回月例展(終了)


イベント詳細


テーマは
・4月の熊楠 大蔵経を法輪寺から借り出し抄写する。
・5月の熊楠 「南方随筆」が刊行される。

神社合祀反対運動での奮闘と表裏する時期に、熊楠は大蔵経の抜書をほとんど間断なく続けた。熊楠が一心不乱に書き抜いた大蔵経の抜書について、熊楠が抄写した大蔵経の現物や、当館所蔵の熊楠の日記、田辺抜書などを写真パネルや解説パネルにより展示しています。
また、熊楠の著書として生前に刊行された3冊のうちの『南方随筆』の刊行について写真パネルなどにより展示しています。

展示の紹介
「紙本大蔵経」 (法輪寺所蔵:田辺市指定文化財)
この地方唯一の紙本大蔵経(黄檗版)は、法輪寺の経蔵に保管されている。
現存する経典は1,955冊に及び、88箱の木箱に収められており、延宝6年(1678)の出版になると思われる。
『田辺市の指定文化財』より

法輪寺 (昭11撮影)
曹洞宗の法輪寺は、中屋敷町の熊楠の家に近い。黄檗版大蔵経と牧野兵庫の墓で知られる。熊楠はこの寺の大蔵経を次々と借覧し、抄記した。牧野兵庫は紀州藩祖徳川頼宣の重臣だったが、田辺に幽閉されて死亡した。熊楠は兵庫についての考証もしている。
『南方熊楠アルバム』より

田辺抜書
3年半にわたって時には夜を徹してまで一心不乱に書き抜いた大蔵経の抜書は、「田辺抜書」の第15冊から第33冊、第42冊(これのみ1919年)にまで及んでいる。
飯倉照平『南方熊楠』より

南方随筆
1926年の2月に『南方閑話』が、5月に『南方随筆』が、11月には『続南方随筆』が刊行された。
熊楠の生前に刊行された著書はこの3冊だけであった。

大正15年5月27日の熊楠の日記
熊楠は日記によく新聞記事の切り抜きを貼り付けている。購読していた大阪毎日新聞が多く、この日の日記には、南方随筆の広告を貼り付けている。
また、日記の中に「本日の大毎紙に、南方随筆広告出。定価三円五十銭、送料内地二十七銭、其他五十五銭。四六面取天金、特装挿画二、四七〇頁。」とある。

担当
浜岸宏一