第27回 月例展開催


イベント詳細


南方熊楠とゆかりの人びと 第10回 リスター父娘

アーサー・リスター(1830-1908)とグリエルマ・リスター(1860-1949)は、19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍したイギリスの粘菌(変形菌)研究者親子です。
父アーサーは、光学技師ジョゼフ・J・リスター(顕微鏡の色消し対物レンズの開発者)の末子でした。自営業のかたわら、幼少時以来の趣味である自然観察を続けていましたが、30台半ばになってから本格的な植物学の学習を始め、隠花植物研究に加え、蛾や蝶の採集も子供達とともに行いました。1876年から77年にかけて、変形菌ブドウフウセンホコリの培養を行い、この成果に基づく粘菌の原形質流動についての報告を1877年2月にリンネ協会で行った頃から、粘菌に本格的に取り組むようになったようです。研究を職業としない、イギリスの伝統として南方も称揚したアマチュア研究者でしたが、1884年頃から粘菌の分類学的研究を本格化させ、エディンバラ大学、キュー植物園やシュトラスブルクにあるアントン・ド・バリーの標本などを次々に調査、1892年には大英博物館(自然史)の標本目録作成を依頼され、それらの成果を総合して1894年に『粘菌モノグラフ』(Monograph of Mycetozoa)を刊行しました。
1873年リンネ協会会員、1898年英王立協会会員となり、1906年にはイギリス菌学会会長となりましたが、基本文献となった『粘菌モノグラフ』の改訂に取り組んでいたさなかの1908年に78歳で亡くなりました。
娘グリエルマは、そうした父と、アマチュア画家だった母の間に生まれ、学校教育は一年間受けただけで、ほとんど家庭で教育を受けてそだちました。早くから父の粘菌研究を助けており、父アーサーは『粘菌モノグラフ』初版の序文に「私の粘菌研究と、図版の準備期間を通じて、ずっと娘グリエルマ・リスターの援助を受けた」と記しています。1911年と1925年、『粘菌モノグラフ』の改訂第二版及び第三版を刊行しました。
1903年、創立発起人の一人としてイギリス菌学会に参加(1912年と1932年の2度会長)、また1904年、リンネ協会が女性会員を認めた際、推薦されて会員となりました(1929年から31年まで副会長)。生涯を独身のアマチュア菌学者としてすごしました。
開催期間
平成22年10月9日(土)~11月7日(日)

場所
南方熊楠顕彰館1F
■展示内容
リスター父娘の紹介
リスター父娘と熊楠の交流:文通の始まりと進展
熊楠の採集標本:新種の発見とリスターの発表
熊楠の神社合祀反対運動をめぐって
ミナカテルラ・ロンギフィラ
■展示物
リスター父娘からの書簡
リスター父娘の著作

■説明会(無料、事前申込不要)
10月16日(土) 浜岸 宏一(南方熊楠顕彰会 学術部 部長)
10月23日(土) 中瀬 喜陽(南方熊楠顕彰館 館長)
各回PM2:00~

■担当
田村義也
■講演会
熊楠をもっと知ろう! 第11回
「在英時代とその後(熊楠とロンドンの交流)」(仮題)
講師:松居 竜五(龍谷大学准教授)
田村 義也(南方熊楠顕彰会 学術部 副部長)
日時:11月3日(水・祝) 午後1:30~
休館日
ホームページの休館日カレンダーをご参照下さい。